欠伸軽便鉄道通信37
2024-12-01


庭園鉄道の安全性(連載第37回)


 庭園鉄道は個人の趣味ですから、自分が楽しむためにあるといえます。しかし、普通の模型よりも大きいため、不注意によって生じる事故も大きくなる危険があります。楽しさも大事ですが、なによりも安全であることが一番優先されます。
 5インチゲージの機関車は、100kg近くの重量があり、人とぶつかれば重大な事故になります。たとえば、小さい子供の場合は大怪我をする可能性も高く、取り返しがつかない事態になるかもしれません。車輪とレールの間に手や足を挟めば、切断する危険もあります。近くに子供がいないことを常に確認しましょう(図1)。
 このサイズのミニチュア鉄道が一般の人を乗せているイベントを見かけますが、有料、無料に関係なく、原則としては違法になる可能性があり、事故が起こった場合の責任を問われます。運転する人以外に、乗客の安全を常に確認できるスタッフが必要でしょう。
 欠伸軽便鉄道では、一般の乗客をお断りしています。たとえ希望があった場合でも、子供は乗せません。「頼まれたから」というのは理由にならないからです。海外では、ミニチュア鉄道の脱線事故による死者が出た例があります。
 このほか、ライブスチームであれば、高温、高圧のボイラが危険です。万が一の事故に備えて定期的な点検が義務づけられています(写真1、2)。エンジンで走る機関車はガソリンを(写真3)、また小さなライブスチームはアルコールを燃料としています。これらは非常に引火しやすい物質ですから、充分に気をつけて下さい。特に、アルコールは屋外では炎が見えません。気がついたときには燃え広がっている場合があります。
 電気機関車にも危険が潜んでいます。12Vのバッテリィを搭載していますが、配線がショートした場合、たちまちコードは焼けて融解し、発火する可能性があります。バッテリィからの配線には、必ずヒューズやブレーカと取り付けて下さい(写真4)。
 これらは、いずれも大きさゆえの危険といえます。ボイラも燃料もバッテリィも、重量物を動かすだけの大きなエネルギィを持っているのです(図2)。
 また、庭園鉄道の工事でも、同じことがいえます。土を掘ったり、重量物を持ち上げる機会には、怪我をしないように注意して下さい。特に、一人だけで工事を行うことが多いので、怪我をしたときに助けてもらえません。充分に気をつけましょう(図3)。
 欠伸軽便鉄道では、線路上にいた蛇が機関車の車軸にからみついて脱線したことがありました。蛇は怪我をしたようですが、こちらを睨んでいたので、怖くて近づけず、しばらく放置するしかありませんでした。30分ほどあとに見にいくと姿がなく、どこかへ行ってしまいました。大怪我ではなかったようで、ほっとしました。

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写真1 蒸気機関車の圧力計: 蒸気を作るボイラ内は、大気の5倍くらい高圧になる。5インチゲージでも45mmゲージでも、ライブスチームには圧力計が装備されている。


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[「子供の科学」連載]

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